今回は着物の寸法について、少し込み入ったお話をさせていただこうと思います。
「着物を持っていたため、仕立ては着物寸法をお伝えしましたが
着てみると大きかったので持っている着物と比べてみますと
腰の位置で身巾が大きく仕立てられています」
という、お問い合わせがありました。
前巾と後巾ですが、これは「裾で測った身巾の寸法」となります。
腰の位置で身巾を測ると、裾と同寸か、もしくは少し大きくなります。
なぜ腰の位置で身巾が大きくなってしまうのかを、ご説明したいと思います。
腰の位置で身巾が広がってしまう体形は、「腕が長くて細身」の体形です。
この体形の方は、肩巾と身巾で大きな差があります。
肩から腰にかけて急激に狭める必要があるわけですが、こんな縫い方をしてしまうと生地が歪になり着物はシワシワになってしまいます。
そのため、生地が歪にならないギリギリの角度でゆるやかに狭めていくので、寸法によっては腰の位置で身巾が大きくなります。
この角度は、寸法はもちろん生地によって変わってきます。
大島紬のようなハリのある固めの生地と、ちりめんのやわらかい生地とでは、許容できる歪みに差があります。
また、実際に縫ってみないと分からない繊細な角度なので、どこまで角度を急にするかは縫い手さんにおまかせしています。
もちろん、縫い手さんにはお客様の体形をお伝えしているので、できる限り腰で広がらないよう配慮して縫ってもらっていますが、その生地、その寸法、その人の縫い方で、どの程度狭められるかはまちまちです。
着物によって腰で身巾が違ってくるのは、このためです。
腰であまり狭められない…という場合は、今度は肩巾を狭めます。
肩巾を狭めたら腰までの角度がゆるやかになるので、その分身巾を狭められるわけですが、今度は裄が足りてきません。
足りない分は袖巾で広げますが、おそらく生地を接いで袖を広げることになります。
足し布が取れるかは、反物や、仕立て寸法によって変わりますので、対応できないこともあります。
袖で生地を接ぐのは嫌だという方も当然いらっしゃるので、いったいどのやり方がベストなのかは一概には言えません。
腕が長くて細身の体形は、「この寸法!」というのが決めにくいとっても難しいご体形です。
一枚一枚と向き合いながら、腰での身巾を決めていきます。
もしお手元に「マイベスト寸法」の着物があれば、お仕立ての際にぜひ腰での身巾も一緒にお知らせください。
ただ、生地によっては歪みを許容できない場合もあるので、全てがベストの寸法で仕立てられるわけではないことを、あらかじめご了承をよろしくお願い致します。