礼装として着物に欠かせないのが、家紋です。
家紋の入った着物のことを「紋付着物」または「紋付」といいます。
今回は珍しい紋付着物のご注文を承ったので、
紋入れのご説明とあわせてお話いたします!(^O^)/
男着物の紋付といえば、黒紋付です。
この着物は「必ず家紋が入る着物」なので、家紋が入るところは染められていません。
こういう白生地のままの部分を「石持ち(こくもち)」といいます。
※本当は反物の状態ですが、わかりやすくするために着用画像にしています※
この部分は白生地のままなので、あとから着用する方の家紋を染めたり描いたりできるのです。
しかし、黒紋付以外の反物だと石持ちはまずありません。
ほとんどの反物は、生地を全て染めた状態になっています。
気に入った反物を見つけて「これに家紋を入れたい」と思ったら、
紋屋さんは家紋が入るワンポイントだけ色を抜いて白生地にします。
これを「染め抜き紋」といいます。
正絹の着物で家紋を入れる時は、ほとんどがこのやり方です。
しかし、反物を染める前に家紋を入れることが分かっていると、生地を染めると同時に紋入れができます。
昔と比べますとめっきり数が少なくなりましたが、
これが染め抜き紋として一番丁寧な入れ方です!
生地を染める段階での紋入れはどのような過程になるのか、ご紹介したいと思います。
まだ白生地の反物に、家紋の形に糊を置きます。
この状態で染めると、糊の部分だけ染まらず白く残るというわけです。
糊を置く型紙がこちら。↓
型紙は職人が手作業で掘って形成します。
糊を置く位置も、仕立てる方の体形に合わせます。
紋の上に線が書かれていますが、どこに紋を入れるかの目印です。
この目印を「スミ打ち」といいます。
こうして防染した反物を染めると…
このように紋が入った状態で出来上がります。
通常、ここまで濃い色ですと生地がしっかりと染まっているので
あとから色を抜くのは難しいです。
濃い色だと白く抜けきれなかったり、
抜くために強い薬品を使って生地を傷めるおそれがあるからです。
一度染まった生地から色を抜いた「白」と
最初から何も染まっていない「白」はやはり違います。
濃い地色に、白くハッキリと紋が抜けているのは
白生地の時点で糊を置いていたからなのです。
こういう事ができるのが、誂え染めの醍醐味でもあります。
誂え染めについてご興味がございましたら
ぜひこちらもご覧ください(^-^)
https://www.otokokimonokato.com/c/mkim/gr172