こんちには、男着物の加藤商店店長加藤大典です。
当店では、着物の楽しさを知ってもらい、皆様の着物ライフをサポートしております。
着物に関するお困り事等がありましたら、お気軽にお尋ね下さい。
そんな加藤が、着物の対する思い、着物ライフの楽しさを伝えるために、職人取材をライフワークにしたライター米原有二がその本音の深いところまで迫り、インタビューを通してお伝えします。
加藤大典(かとうだいすけ)
1976年京都生まれ
明治26年創業の京友禅着物の染色工房に生まれ、着物が身近にあるという環境で育つ。
学生時代を含め多くの海外での旅を経験したのち旅行代理店での営業を経て、家業である染色工場に入社。
現在は着物・浴衣を販売するWebサイトの運営の傍ら、伝統工芸技術の継続、継承のため、販売・広報両面からの活動を行っている。
趣味:自転車、海外旅行(最近は京都市内を日帰りで観光しています)
聞き手:米原有二 構成・文:加藤商店
―なぜ男着物専門店なのか?
米原:まず最初に「男着物の専門店」ってすごく珍しいのですがなぜこのようなサイトを立ち上げたのですか?
加藤:元々家業は女性の振袖を染めている工房なので、女性モノを中心とした通販を始めたのですが、
徐々に男性の方にもお問い合わせなどを頂いて着物を着たいって想う男性に
気軽に初めてもらいたいと思ったのがきっかけです。
私が男性なので、着物を着ていて思ったことや感じたことをそのままストレートに伝えることができるのも
後押しになりましたね。
当時は、男性物の着物を扱っているお店や問屋も少なくって、お客様より「○○が欲しい」っていう
お問い合わせもすぐに用意できず苦労したのですが、根気強く取引先などと話をしていくことで今では価格の商品のラインナップも広がってきています。
―着物を気軽に着て欲しいんです!!
米原:そうですね、加藤商店さんの着物って思ったよりも買い易い価格で驚きました。
加藤:はい。とにかく、着物のことをよく知らない人にでも気軽に始めてもらいたいという想いが強かったので、取り扱っている着物は皆さんが思われている以上に買い易い価格の着物が多いですね。 というのも、素材がポリエステルの着物も取り扱っているのが理由の一つです。 ポリエステルは汚れてしまっても自宅で洗えるなどのメリットも多いので、初心者さんいは気軽に始めてもらえるとも思います。
米原:着物にポリエステルってあるんですね。
加藤:そうなんです。 着物の素材は絹(シルク)が一般的なんですが、ポリエステル素材の洗える着物が、昭和30年ごろ出始めて今では人気です。
ポリエステルっていうと安物のイメージがあるんですが、汚れてしまっても 気軽に洗うことが出来るし、とても使い勝手がいい素材です。
でも社長(父親)からは、「着物の染屋やからいいもん扱え!」って最初は反対されましたけれど(笑)
確かに絹の着物は風合いや着心地もいいんですが、気軽に「着物を着てみようかな」と 思っている人には、何十万もするのは非常に高価ですし 汚したらいけないと思って着る回数が減ったという人をよく聞いてました。また、せっかく着物を買ったはいいものの袖を通さず、タンスに眠っているってことも聞いたことがあります。
だからまずは、自宅でも手軽に扱える着物から着始めてもらい段々と着物を楽しんでもらいたいと思っています。とはいっても、今のポリエステルでも非常に良いものもあります。見た目も高価な着物のと比べてもそんなに遜色もないので気軽に着てみたいという方にはお薦めです。
―ファッションの一部として
米原:ところで加藤さんは毎日着物で過ごしているんですか?
加藤:毎日は着ないです。普段は洋服で過ごしています。でも週末の時間のある時に街着としてや、友人との食事会や、ちょっとした集まりの会、パーティーなどがあれば着物で出かけています。また、ちょっとしたお出かけにも着て行くので、着る機会は年々増えています!!
この仕事をはじめた最初の頃自分でも着物を着ないといけないと義務づけていた頃もあったんですが、今は楽しんでいますよ!
着物を着始めのころは「きちんと着れているかな」など気を使う部分が多かったのですが、「どう個性を出そうかな?」とか、わざと洋装っぽい小物や色を組み合わせたりと今ではファッションの一部になっていますね。
いち時期、ユニクロさんが浴衣を販売していた時期があったじゃないですか。それ以降男性にとっても浴衣は夏の定番にはなったと思うんですが、着物もそうなれば楽しいんじゃないかと思っています。
米原:他にはどんな時に着物を着られるんですか?
加藤:街着やとしてだけじゃなくても例えば友人の結婚式や二次会。
着物で行くと友人も喜んでくれるし、ご家族の方も喜んでくださいます。以前参列した結婚式と二次会では新郎の仕事の関係上、外国人の方もいらっしゃた時があって、その時なんて友人の新郎より目立ったくらい(笑)、自分も着物を着て楽しかったし、回りの方々も喜んでくださったし、とても素敵な結婚式でした。
和を感じるようなお寺や神社もいいですね。休日に京都のお寺や神社を巡ることが好きなんですが、そんな時着物で行くと心が落ち着きますし、庭園ひとつとっても今まで感じなった感覚で眺めたりするようになりました。大げさかもしれませんが和の文化を直接肌で感じ取れるようになった気がします
米原:京都ってお寺や神社などが多いので着やすいのではと思うのですが
加藤:確かに京都は寺社仏閣も多いですし、土地柄男女問わず着物を着ている人を多く見かけます。でも、先日東京に行ったときにも、若い人が着物を気軽に街に出てファッションとして着ている姿を見た時に「かっこええなー」と思いました。
お寺などの和を感じるところだけじゃなくても、彼ら彼女達は着物でカフェに行ったりしています。
ファッションに敏感で、インテリジェンスが高いとも思いましたし、かっこいいなと思いました。全国各地で着物をライフスタイルとしても、取り入れる人も増えてくれたら楽しいだろうし最高ですね!
米原:話を聞いていると楽しそうですね!私もワクワクしてきました!
加藤:そうなんです!楽しいんです! 楽しいだけじゃなく、今までと違った非日常感を味わえるというか。 私は普段何気なく出かけるところや、はじめて訪れるところなどでも新しい気持ちや感覚になれる気がします。
―着物は『日本の心』である。
米原:加藤さんにとって着物ってどんなものなんですか?
加藤:う〜ん...難しい質問ですね。今だから思うことは、私にとって着物は物(モノ)ではないんです。ファッションやライフスタイルとしても大事なんですが、着物を着ることで「和」というものを意識するようになりましたし、日本人としてもアイデンティティーを更に感じるようにもなりました。大げさかもしれませんが「日本人の心」でもあると思います。
日本には四季があって、その時々で風景や生活様式も変わります。季節に合わせて、“衣・食・住・遊” を楽しむことができます。春は桜を楽しみ、暑い時には涼しくなる工夫をし、秋には情緒を感じながらも寒い時期に備えてた生活を送ったりしていました。
私が着物を着ることで感じるようになった「花鳥風月」「侘び寂び」「粋や雅」といった、日本人が大切にしてきた美意識も着物を通して世の中の人に感じて頂けるようにしていきたいんです!
私は学生時代を含め、貧乏旅行をたくさんしてきました。海外に行くと、日本では経験したことのないような非日常を経験できるとだけ思っていたのですが、その時々で知り合う人たちに日本について聞かれたときに、
語学の問題があるにせよ日本について多くを語ることができませんでした。
でも今私は運よく、日本の伝統産業である「着物」に携わる仕事をしています。まだまだ着物や「和」についても知らないこともありますが、まずは着物の素晴らしさ、楽しさを知ってもらいたい考えています。
米原:本日は、ありがとうございました。最後に、このインタビューを読んでいる方に一言お願いします。
加藤:最後のほう、少し堅苦しい話になりましたが、やはり
「着物を楽しんでください」
人って楽しいことが好きですからまずは楽しむこと!着物を楽しんでいる姿が必然と回りの人達を喜ばせ楽しくなります。
気軽に!そして笑顔になれる着物を一緒にこれからも楽しみましょう♪
米原有二(よねはら・ゆうじ) http://www.sakura-ew.net/
1977年京都府生まれ。ライター。
おもに伝統工芸を対象とした取材・執筆活動をおこなう。著書に『京都職人』『京都老舗』(共に共著・水曜社)など。